定義規定の書き方って?法務文書で使える技法を弁護士が紹介

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 本記事では、弁護士が、契約書、利用規約、プライバシー・ポリシーなどの法務文書で使える定義規定の技法について、ご紹介いたします。法務の参考に、どうぞご覧ください。

目次

定義規定の技法

 内容が一義的に定まらない用語については、法務文書内に定義規定を置くこともあるでしょう。そんなときに使える技法を、法令を参考に、4つご紹介いたします。

技法1:条項スタイル

 次のように、条項で定めます。

(定義)

第・条 この契約において、「〈用語〉」とは、〈意義〉をいう。

2 この契約において、「〈用語〉」とは、〈意義〉をいう。

 このスタイルは、各々の箇所で定義を置くよりも、冒頭にまとめて置いた方が分かりやすいときなどによく使います。

 例えば、次の労働契約法の定義規定が参考になるでしょう。

労働契約法

(定義)

第2条 この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。

2 この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。

技法2:列記スタイル

 次のように、各号に列記して定めます。

(定義)

第・条 この契約において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 一 〈用語〉 〈意義〉をいう。

 このスタイルも、条項スタイルと同様、各々の箇所で定義を置くよりも、冒頭にまとめて置いた方が分かりやすいときなどによく使います。

 例えば、次の著作権法の定義規定が参考になるでしょう。

著作権法

(定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

 二 著作者 著作物を創作する者をいう。

 三〜二十五 略

2〜9 略

技法3:丸括弧スタイル

 次のように用語の直後に丸括弧を入れ、当該丸括弧内に〈意義〉と〈使用範囲〉を明記します。

第・条 甲は、乙に対し、役員(取締役、執行役、執行役員、監査役、相談役及び会長のほか、名称の如何を問わず甲の経営に実質的に関与している者をいう。以下同じ。)が反社会的勢力でないことを確約する。

 上記の例では、同条以下において、「役員」という用語が「取締役、執行役、執行役員、監査役、相談役及び会長のほか、名称の如何を問わず甲の経営に実質的に関与している者」という意義で使われていくことになります。

 「以下同じ。」ではなく、「以下この項において同じ。」などとして、使用範囲を限定する場合もあります。

 このスタイルは、各々の箇所において丸括弧書で定義を置いた方が分かりやすいときや、他のスタイルと組み合わせたいときなどによく使います。

 例えば、前述の条項スタイルと組み合わせたやや応用的な形になりますが、次の不正競争防止法の定義規定が参考になるでしょう。

不正競争防止法

(定義)

第2条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

 一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

 二〜二十二 略

2〜11 略

技法4:略称スタイル

 いわゆる「略称規定」を使うスタイルで、次のように〈意義〉の直後に丸括弧を入れ、当該丸括弧内に〈使用範囲〉と〈用語〉を明記します。このとき、当該〈用語〉には鉤括弧を付けます。

第・条 甲は、乙に対し、取締役、執行役、執行役員、監査役、相談役及び会長のほか、名称の如何を問わず甲の経営に実質的に関与している者(以下これらの者を総じて「役員」という。)が反社会的勢力でないことを確約する。

 上記の例では、同条以下において、「役員」という用語が「取締役、執行役、執行役員、監査役、相談役及び会長のほか、名称の如何を問わず甲の経営に実質的に関与している者」という意義で使われていくことになります。

 「以下」ではなく、「以下この項において」などとして、使用範囲を限定する場合もあります。

 このスタイルは、各々の箇所において、ある内容(意義)に略称(用語)をあてる形で定義する方が分かりやすいときや、他のスタイルと組み合わせたいときなどによく使います。

 例えば、次の民法の規定が参考になるでしょう。

民法

契約の成立と方式

第522条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

2 略

まとめ

 今回は、定義規定の書き方について、法令を参考に4つの技法をご紹介いたしました。本記事が、正確かつ簡潔で、分かりやすい法務文書の作成のご参考になれば幸いです。

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